2013年10月27日日曜日

ジャズアドリブ入門に異議アリ!(1)!(2)

ジャズアドリブ入門に異議アリ!(1)

http://blog.goo.ne.jp/anomaria/e/eedabf5b187c49a73a989dc8abb7b0f2

モダンジャズを演奏しようと思ったら、どんなパートであれ、アドリブは避けて通れないと言って良い。
一方、即興でどんどんフレーズを紡ぎ出していく、と言うのは、未経験の人間にとっては一体どうしたもんか、見当も付かない。
作曲と演奏をいっぺんにやってしまうようなモノだからだ。
さて、どうしたもんか・・・そんなヒトのために、アドリブ入門書がたくさん出版されている。音楽雑誌で短期連載講座なんて言うのもあるし、インターネット上のものもある。
別に珍しくもない。

ただ、一般的なアドリブ入門の───特に簡易版の入門に多いのだが───傾向に異論がある。
一般的な傾向と言うのは以下の通りだ。

皆さん、アドリブは初めてでしょう。
アドリブは簡単です。
最初に「使って良い音」を理解しておけば良いのです。
これを知っておけば、スットンキョウな音は出ないですからね。
この音の集まりをスケールって言います。
いろんなスケールがあるんですが、一番簡単なのがペンタトニックスケール。
例えば、ラで始まるペンタトニックスケールは下から「ラドレミソ」。たったの5種類の音。
このペンタトニックスケールによるアドリブなら、ラ・ド・レ・ミ・ソを適当に組み合わせてフレーズにしてっちゃえば良いのです。
どうです、簡単でしょう。

果たしてそうだろうか?
私は、1年程、とあるフリージャムセッション(フリージャズをやってるんじゃなくて、誰でもフリーに参加出来るセッションね)でピアノを弾いて来た。そのセッションでは、超初心者も歓迎って言うことで、文字通り、今日がセッション参加初めてです、アドリブ初挑戦です、なんてヒトも来る。

私の経験談から言えば、アドリブ初心者のアドリブがカッコ悪いのは、スケールから外れているからではなく、むしろリズムがダサいからである。
アドリブは大雑把に言えば「使って良い音を」「タイミング良く組み合わせる」ことだが、初心者は後者が苦手なのである。
アドリブが当たり前になっている人間には、「後はさー、ほら、テキトーにこんな風にさー・・・」と言う感じで、なんとかなるように思えてしまうのだが、意外に「なんとかならない」のだ。

4ビートにおける初心者のアドリブの典型的な悪い例を挙げてみよう。
使っている音は、Aのペンタトニックとしよう。
下から、ラ→ド→レ→ミ→ソと上がって、またミ→レ→ド→ラ、と下がって来る音使いのフレーズとする。
1小節は4拍。

|ラード・レーミ・ソーミ・レード|ラ・休・休・休|

こんな感じだ。
何度か頭の中で繰り返してみて欲しい。
なんだか盆踊りを踊りたくなって来ないだろうか。
2小節目など、|ラ・ヨイ・ヨイ・休|とあいのてを入れたくならないだろうか。
あるいは、阿波踊りになってしまったりしないだろうか。
チャンカ・チャンカ・チャンカ・チャンカ・・・

さて、これを半拍づつ後ろにずらしてみよう。

|ッラ・ドーレ・ミーソ・ミーレ|ドーラ・休・休・休|

これも繰り返してみて欲しい。
カッコいいフレーズ・・・と言えるかどうか知らないが、さっきより格段にジャズっぽいフレーズになったはずだ。
ほんのちょっとタイミングをずらしてやっただけで、こうもフレーズの印象が違うのだ。
使う音、そしてその使う順番は全く同じなのに、である。

(つづく)

ジャズアドリブ入門に異議アリ!(2)

カッコいいリズム、カッコいいノリのフレーズはどう作ったら良いのか。
ここを「ノリでなんとなく」で済ませてしまってはいけないように思う。
私は、初心者にとって、カッコいいリズムは、ペンタトニックスケールと同じか、それ以上の重要性を持っていると考えている。

では、初心者にとって“カッコいいリズム”とはなんだろう?
リズムパターンは3連符などもっと速い譜割りまで考慮すれば、無限とも言って良い数である。とても、簡易講座で取り上げ尽くすことは出来ない。
しかし、とりあえず5音から成るペンタトニックスケールを初心者用の即戦力用スケールとして挙げたように、リズムパターンも何か即戦力用の万能薬がないものだろうか。

そこで考えてみた。
4ビートのリズムは以下のようになっている。

|ターラ・ターラ・ターラ・ターラ|・・・・・

このノリに乗って、いくつかの短いフレーズを組み合わせ、長いアドリブを作り上げていくワケだ。

ここに、たった2つ、縛りを入れてみる。

(1)フレーズの終りは必ずラの位置(裏拍と言う)で終らなくてはならない。
(2)フレーズは4拍以上連続してはならない。

これだけである。
(1)(2)を守ってフレーズを構成していけば、簡易版でダサくならないリズムの出来あがりなのだ。

ちょっと実例を挙げてみよう。

|休・ターラ・休・ターラ|ッラ・ターラ・ターラ・休|ターラ・ーーー・ターラ・休|

「ターラ」「ターラ」「ッラ・ターラ・ターラ」「ターラ・ーーー・ターラ」の4つのフレーズを組み合わせてアドリブとしてみた。
ちなみに、“ーーー”は1拍伸ばすことを意味する。
どれも、フレーズの終りは「ラ」であり、4拍を超えていない。
これにラドレミソラをランダムにあてはめてみて欲しい。
なんとなく“ソレらしい”ノリが出ると思うのだが。

勿論、本当のアドリブには別に「ラの位置(裏拍)でフレーズが終ってはいけない」だの「4拍以上連続したフレーズはいけない」などと言う規則はない。
自由にして良い。

上記の2つの「フレーズ縛り」も初心者には結構難しいと思う。
頭では分っても、いざ演奏となり、リアルタイムにリズムを作りだしていこうとすると、これがどうしてナカナカの難物のはずだ。

しかし、これをしばらく試してもらえば、なんとなくジャズッぽいリズム感が身につくのではないかと思っている。
何故なら、このフレーズ縛り、実は「裏拍を強制的に意識させる手段」なのだ。
裏拍のノリが、ははーん、こんな感じか、と分ってくれば、4ビートのアドリブはかなり“しめたもの”だと私は思っている。

ジャズのアドリブを目指す初心者の方は、ちょっと頭の中でお試しアレ。

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